英文契約書のリーガルチェック業務についてworks

【 目次の開閉 】
  • 当事務所のリーガルチェックの内容
  •   
  • 当事務所のリーガルチェック例 秘密保持契約
  •   
  • 上記チェックポイントの英米法とその判例からの視点
  •   
  • 当事務所のリーガルチェック例 製造物責任
  • 当事務所のリーガルチェックの内容

    当事務所のリーガルチェックの内容は「取引を成功させる全内容が記載された英文契約書」となるように

    ①契約目的を確実に達成できるかどうか

    ②リスク配分が適切に定められているか、紛争を予防できてるか

    ③相手方と訴訟になったときに被害を最小限に抑え、損害を適切に回復できるかどうか

    「Three-Deep-Insight」をベースに、法律的観点(日本法又は英米法・それら判例・各種条約)、地理的観点、ビジネス的観点、裁判官的観点などから「問題の有無」・「条項の過不足」・「不適当な条項」を徹底的に検討させて頂きます。

    もし問題がございましたら、問題のある条文に対して「修正の理由・根拠・交渉方法」を随時、日本語でコメントさせて頂きます。

    各コメントにて、修正すべき条項の優先度合いをABCランクで表示しており、優先度の高いものから修正できるとご好評をいただいております。

    以上、当事務所のリーガルチェックは「取引を成功させる全内容が記載された英文契約書」となることを目的とし、内容・質が他の事務所様とは異なるものと自負しております。

    当事務所のリーガルチェック例 秘密保持契約

    ここでは、当事務所のリーガルチェックの実際の例(秘密保持契約の「損害賠償額の予定」のみ)をあげてみたいと思います。

    本件は、IT会社様がWEBの制作等を請け負う前提としまして、秘密保持契約書を相手方企業から提示されたものをリーガルチェックしたものです。

    従いまして、以下の内容は情報公開を受ける側の立場からのリーガルチェックとなっております。

    英文契約書の条文(秘密保持契約)

    検討条文

    Articl15.

    Breach

    If the Receiving Party discloses any of the Disclosing Party’s Confidential Information, the Receiving Party shall bear the breach liability and compensate the Disclosing Party for RMB 500,000 Yuan. If the compensation cannot cover the Disclosing Party’s actual loss, the Receiving Party shall compensate more until the Disclosing Party’s actual loss being totally covered.

    実際のリーガルチェック

    損害賠償額の予定(秘密保持契約)

    条文15

    チェックポイント①

    賠償額の予定が、RMB 500,000 Yuan(人民元500,000元)となってますので、これで妥当かどうかの確認が必要です。

    賠償額の予定が仮に不相当に過大な額が相手方より提示されていたとしても、裁判所で争うときには合理的な範囲が定められた条項のみが有効とされ、不合理な規定は無効となります。

    (下記で本チェックポイント①を英米法の観点から詳しく説明しております)

    チェックポイント②

    If the compensation cannot cover the Disclosing Party’s actual loss, the Receiving Party shall compensate more until the Disclosing Party’s actual loss being totally covered.

    上記について、制限、又は、本文の削除を要求する必要があると思われます(詳しくは下記をご覧ください)。

    秘密保持契約の違反で生ずる損害はその額があらかじめ予見しにくく、思わぬ額になりかねませんので、出来る限り負担を少なくする方向で交渉する方が良いと思われます。

    交渉の手順の一例としましては、

    ①actual lossについての一文を削除してもらう。

    理由は、そもそも賠償額の予定の規定があるのは、秘密保持契約において損害額の算定が困難あるいは予見しにくいからこそ、actual lossの賠償の代わりに特別に規定されているからです。

    二つの条項を置くのは、公平ではないと思われます。

    actual lossの損害賠償請求が可能ならば、逆に賠償額の予定の条項が不要となると言えます。

    また、情報の管理方法を厳格にして情報の流出・漏えいを最小限とするのでという、こちらの譲歩も良いかと思われます。

    ②削除してもらえなければ、actual lossを制限してもらう。

    理由は、actual lossでは損害賠償の範囲が不明確だからです。

    出来れば、結果損害(Consequential damages)、間接損害(Indirect damages)、逸失利益(Lost profits)、付随的損害(incidental damages)、特別損害(Special damages)を除外してもらえるよう交渉してください。

    また、相手方に「損害発生を最小限に抑えるよう協力する義務」を求める記載も重要となります。

    この義務があると、裁判上で損害賠償責任の責任負担につき一定の帰責性を相手方に求めることが出来ると思われます。

    ③actual lossを制限できなければ、損害賠償額の予定の条項を削除してもらう。

    理由は、上記①に書いた通り、損害賠償額の予定とactual lossの損害賠償の規定は、補填的な関係にあるからです。

    (下記で本チェックポイント②を英米法の観点から詳しく説明しております)

    上記チェックポイントの英米法とその判例からの視点

    チェックポイント①について

    ニューヨーク州法や、UCCの§ 2-718. Liquidation or Limitation of Damages、第2リステイトメント356条において、合理的な額を超えた損害賠償額の予定の条項は無効とされます。

    よって、相手方企業が提示してきた額が不相当に過大だと交渉したが、相手方が折れなくても、最終的には裁判上でその額について争うことが出来、また、本条項自体を無効とすることもできます。

    チェックポイント②について

    損害賠償の問題は英文契約書のリーガルチェックでも一番重要なものの一つです。

    なぜなら、履行が行われなかった場合など一方当事者に何らかの損害が生じた場合に、その当事者の地位を「金銭」によって回復するものだからです。

    その中でも、イギリスの判例のHadley v. Baxendale 1854による損害賠償の分類と、この通常損害と特別損害を英文契約書上で当事者の立場を考慮し、如何に制限、又は、獲得していくかは非常に難しく、テクニカルな問題です。

    直接損害については、アメリカのテキサス州の判例、Innovate Tech. Solutons, LP v. Youngsoft, Inc.,2013の判例が参考となります。

    また、逸失利益(Lost profits)、特別損害(Special damages)については、Logan Equip. Corp. v. Simon Aerials, Inc.,1990等の判例に基づいて適宜、削除又は追加していく必要があります。

    当事務所のリーガルチェック例 製造物責任

    次に、当事務所の実際のリーガルチェック例としまして、「製造物責任の条項」を売主側(輸入者)の立場で準拠法が日本法の場合をご参考下さい。

    検討対象の条項

    乙は、本物品の欠陥に起因して、第三者の生命、身体又は財産に損害が生じた場合は、乙はその処理解決にあたり最善の努力をするものとし、故意、過失の有無を問わず、その第三者又は甲が被った一切の損害(甲が第三者に支払った賠償額、弁護士費用を含むがこれらに限らない。)を賠償する。

    チェックポイント①

    商品の「輸入者」は製造物責任の対象となり得ます(製造物責任法2条3項)。

    製造物責任法の第三条は強行規定と介されていますので、本条による責任は負わざるを得ないと言えます。

    ですので、対策としましては「PL保険」の付保によることになるかと思います。

    ここで、重要となるのが販売者(海外事業者)への求償となりますが、輸入者は被害者救済のため販売者に代わって責任を負っているという代位責任という観点からすれば、販売者との契約書上で明確に求償権の存在につき規定しておく必要があると言えます。

    チェックポイント②

    以下、甲が被った一切の損害(甲が第三者に支払った賠償額、弁護士費用を含むがこれらに限らない。)へのチェックです。

    「一切の責任」では損害がどの範囲に及ぶかが不明確と言えます。

    ですので、「甲が被った損害のうち、本物品の欠陥と相当因果関係のある損害を賠償する。但し、逸失利益、営業利益の損失、事業の中断を含む間接的、偶発的、特別、または結果的損害への賠償責任を負わない。」等と制限すべきと言えます。

    これは、製造物責任法の第三条では、損害賠償の範囲が確定されておらず、民法によることになり(同法6条)、民法の不法行為法によって解釈されるべきもので、これは、相当因果関係の範囲によってその賠償範囲を画定しようとする考え方が通説であり、判例(最高裁昭和49年4月25日判決等)もこの立場をとっていると考えられるからです。

    上記が受け入れられなければ、「但し」以降を削除するのも一案と言えます。