ほとんどの契約書には前文がついています。
売買契約書や賃貸借契約書、請負契約書、業務委託契約書、秘密保持契約書などなど、沢山の契約書に全文が書かれています。
そもそも前文は必要なものでしょうか。
また、契約書の前文はどのように記載すべきでしょうか。
契約書には、第何条という条項とは別に、前文というものが定められる時があります。
例えば、
株式会社(以下「甲」という。)と (以下「乙」という。)は、甲と乙との間の物品(以下「本物品」という。)の取引に関する基本的事項について、次のとおり取引基本契約(以下「本契約」という。)を締結する。
というようなものです。
契約自由の原則から言いますと、契約書の形式も自由というのが原則ですので、前文についても書かなくても良いことになります。
ですが、前文を置く効用もあります。
まず、前文に当事者を記載することにより、甲や乙という後の記載の重複を避ける記号を掲示できます。
また、契約の全体像が提示されることにより、契約書の内容を把握しやすくなり、各条項の解釈に争いが生じたときに、その解釈の一指標になります。
それに、当事者を前文に記載することにより、当事者が誰であるかが明確になります。
この点において、契約書の末尾に署名捺印するのだから、当事者について争いが起こるとは思えないと思われるかもしれませんが、私は当事者ではないという争い方は結構あります。
会社との契約では、契約書の末尾に社長個人名のみで署名捺印したとすると、その者は、会社の代表ではなく、一個人として契約したので、会社との契約をしているこの契約書は成立していない、と主張することもあります。
ですが、この時に、前文にしっかりと当事者を記載しておけば、社長個人の署名押印ではなく、会社の代表者として署名押印したことが明らかになります。
よって、前文に契約書の内容をまとめておくことは、紛争を防ぐという意味で、有用なのです。