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国立大学O大学 研究センター教授 様より

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契約書とリーガルチェックの方法

形式面のリーガルチェックの方法とは

契約書のリーガルチェックの方法としまして、まずは形式面から説明したいと思います。

形式面と言えば、当事者の押印や、署名、印紙の貼付等の有無を言います。

これらが仮にかけていたとしても、契約としての法律上の拘束力には変わりありません。

ですが、契約上のふんそうが生じたときに、裁判所でこの契約書が本物かどうか判断するときに、契約書の形式面に問題があると、裁判官の判断に著しく不利に働きます。

そこで、契約書のリーガルチェックは、形式面についても行う必要があります。

契約書のリーガルチェックの形式面とは、

① 当事者の表示(賃貸借でいえば、賃貸 人と賃借人)

② 当事者の署名(または記名)押印

③ 契印(または割印)

④ 契約の目的が物ならぱその表示(たと えば売買の目的となったのが土地ならば 所在、地番、地目、地積など)

⑤ 日付

などです。

内容面のリーガルチェックの方法とは

形式面のリーガルチェックに続きまして、契約書の内容面のリーガルチェックの方法について解説していきたいと思います。

契約書の内容面とは、主に、権利義務の表示、当事者の表示、取引条件の表示、将来の紛争防止の表示等について、リーガルチェックを行うことを言います。

形式面が欠けていても契約書としての機能は、一応果たされますが、この内容面が不十分、又は、過度であると、契約書としての本来の機能を確実に果たすことは困難となります。

まさに、契約書の内容面のリーガルチェックは、一番重要の者と言えるでしょう。

では、下記の契約書を参考に説明していきます。

土地売買契約書

第一条 甲は乙に対し左記土地を代金 OO円にて売渡すものとし、乙はこ れを買受ける。

OO市OO町O丁目O番地 当社分譲地OO号 五O坪

第二条 乙は甲に対し内金として金O O円を支払い、甲はこれを受領した。

第三条 乙は甲に対し残代金を左のと おり支払う。

①中間金として平成OO年O月O日 までに金OO円

②最終残金として所有権移転登記の 時までに金OO円

第四条 甲は乙に対し、前条②の最終 代金受領後、直ちに本件土地の所有 権移転の本登記手続をしなければならない。

第五条 前条の所有権移転登記完了の とき、本件土地の所有権は乙に移転 する。

第六条 各当事者のいずれかが不履行 の場合は、不履行の相手方に対し通 知催告を要せず本契約を解除された ものとする。甲が不履行の場合には、 乙に対し第二条の金員の倍額を損害 賠償として支払うものとし、乙が不 履行の場合には第二条の金員の返還 を請求することができない。

第七条 本件土地について、宅地造成 等規制法にもとづくエ事完了の検査済証 が交付されないとき、あるいは その交付が著しく遅延したときは、 甲乙協議の上、本契約を解約するこ とができる。この場合損害賠償の請 求はできないものとする。

以下略

この土地売買契約書式は買主側にとっ ては重大な欠陥、危険があります。

それはつぎの点です。

① 所有権移転本登記と引渡しの日を確定する必要があります。

② 第七条の「協議」は売主の履行の義務 を曖昧にし、売主の不履行を誘発する恐れがあります。

③ 第四条の「最終代金の支払いと所有権 移転登記」は、同時履行にしなければいけ ません。

④ 売主の損害賠償義務が第七条で曖昧にされています。

⑤ 第七条の「著しく遅延したとき…:」 という表現は曖昧です。

⑥ 無催告解除の規定はなるべく避けるべきです。

⑦ 売買の目的となった土地の表示は、地 図その他によって明確に表示しなければなりません。

第4条のリーガルチェック

第四条は、「最終代金受領後直ちに本件 土地の所有権移転登記」をすることになっ ていますが、この代金の支払いと、所有権移転登記は同時にしなければなりません。

なぜなら、よくある事例として、売主が支払いを受けた後に、他の買主に同じ物件を売り、登記も備えてしまう恐れがあるからです。

こうなると、買主は登記を備えた第三者に自己の所有権を対抗することが出来ず、代金の回収まで危うくなります。

そこで、代金の支払いは、売主が所有権の移転登記を行ったことを確認して、その場でなすことが安心だといえます。

第7条のリーガルチェック

第七条には「著しく遅延したとき」と規定されていますが、著しく、という漠然曖昧な文言の使用はできる限り避けるべきです。

それは、曖昧な文言には解釈が必要であり、その解釈は当事者によってその内容が異なるからです。

ですので、一方が、著しいと考えても、他の者が、著しいとは考えないという状況が起こり、紛争へと発展しかねません。

ですので、契約書の内容に定める文言は、明確で一義的な則を使用すべきなのです。

履行期は確定期日できめよう

契約書の内容を定めるとき、作成者は、権利義務関係の記載には細心の注意を払いますが、それらを履行する、履行期の定めについては、疎かにしてしまいがちです。

ですが、この履行期の定めは契約書の内容としても重要なものです。

それは、履行期が定まっていなければ、どこから債務不履行責任が生じるか分かりませんし、買主が金銭の支払いをしたにも拘らず、売主において、目的物の引き渡しを行わないということにもなりかねません。

それに、売主が履行しない間に、目的物が値上がりし、売主は他の者にその目的物を高額で売ってしまうかもしれません。

そのようなことを防止するためにも、履行期は確定期日で定める必要があります。

確定期日がきめられないとき

上記で、履行期は確定期日で定める必要があると、記載しましたが、事情によっては、確定期日を定めることが出来ないという場合もあると思います。

例えば、宅地造成等規制法 一二条によるエ事完了の検査の終了する時期が はっきりしない場合等です。

ですが、上記の検査にも一定の期間が設定がありますので、通例ならば検査が終了すると思われる期間経過後の確定期日に履行期を定めることが出来ます。

その書き方はつぎ のようになります。

第O条 甲は平成OO年O月O日まで に本件土地の宅地造成等規定法による 検査を完了の上、同日までに乙に本件 土地の所有権移転の本登記手続及び引 渡しをなすものとする。

ただし有期限の前であっても右検査 が完了したときは、その日から一週間 以内に、右登記と引渡しとをなすもの とする。

また、何らかの事情で検査が遅延し、確定期日に間に合わなかった場合には下記のように定めておきます。

第O条 期限までに本件土地の検査が 完了せず、所有権移転登記及び引渡し が履行できないときは、乙(買主)は 甲に対し、期限を定めてその日まで猶 予を与え、その期限内に履付すること を求めることができる。

法律 違反による欠陥等のリーガルチェックの方法

法律 違反による欠陥等のリーガルチェックのポイントとしては 形式面、当事者の権利義務を明確にすると いう内容面からのリーガルチェックのほかに、法律との整合性のリーガルチェックが必要です。

金銭消費貸借契約書で、利息制限法から 遅延損害金として請求できる最高 限は年二一・九Oパーセントです。 (利 息制限法四条一項)。

ですので、これに反する利息の定めは無効です。

これに加え、罰則もあります。

「出 資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに 関する法律」に違反する場合があります。

五年以下の懲役 (または罰金)の制裁があるのです(五条 一項)。

貸金業者の場含は二Oパーセント が上限です(同二項)。

協議事項のリーガルチェック

英文契約書とは違い、国内で利用される日本語の契約書においては、必ずと言っていいほど目にするのが、協議事項です。

現在決まっていない事項については、当事者の協議にゆだねるというものです。

一般の契約書のリーガルチェックの方法の本には、このような協議事項の存在には否定的です。

もちろん、出来る限り契約締結前にすべての事項について記載する方が良いのですが、専門家に作成を委ねる場合でなければ、当事者のみですべてを予想して取り決めることは現実には困難な側面があることも否めません。

また、海外企業との取引とは違い、日本人同士では、法律や同じような価値観を共有していると言える場合が多いですので、将来の協議によっても紛争が必ず生じるかと言えば、そのようなことは少ないと言えます。

ですので、あまりに神経質に取引の全ての事項を合意しようとして契約締結までの期間を長期化するよりも、一定程度の大枠が合意できたならば、特に心配な事項や譲れない事項が無いならば、後は協議事項に譲り、問題が出てきた時点で、覚書等で、解決していくというのも、現実的には妥当な面もあります。

ですので、出来る限り、協議事項には頼らないという姿勢は大切ですが、あまりに固執する必要までは国内の取引では無いと思われます。

リーガルチェックの一般的なポイント

上記において簡単にできるリーガルチェックの方法を記載してきましたが、専門家でなければ、この作業でも困難と言えるでしょう。

そこで、契約書を俯瞰するという意味での、一般的なリーガルチェックの方法を解説します。

それは、公平・適正の概念です。

契約書を作成するときには、勢い、自己に有利な条項を定めて少しでも利益を獲得しようと考えがちになりますが、そういった思考で作成された契約書にはどこかしら歪が生じるものです。

ですので、契約書を作成するときの重要な視点として、当事者両方の視点に立って、公平に作成することが、歪みのない、良い契約書となります。

そのような視点は、契約書のリーガルチェックにも当然重要なものです。

当事者両方に公平で、社会に対して適正な契約書というのは、法律的にも適正なものとなるといえます。

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