販売店契約や再販契約、OEM契約等でメーカー様から度々以下のようなご質問を受けます。
それは、販売店(小売店)側に対して小売価格を設定したい、とのことです。
つまり、販売店がエンドユーザーに販売する価格をメーカー側が指定してそれを守らせたいのです。
なぜそのようなことをするかといいますと、販売店による安売りによるブランドの低下を防ぐ、他の販売店との価格競争防止、等のためです。
日本法を前提にしますと、契約自治の原則がありますので、契約に再販売価格を明記しておけば問題なさそうに思います。
ですが、日本法においては独占禁止法による規制があり、EUにおいても規制があります。
米国においては2007年に連邦最高裁判決のリージン(Leegin)事件によって、種々の事情により再販売価格の拘束に対する判断が下されます。
以下、それぞれ概要をみていき、最後に実務的な対応を考察しましょう。
日本においては、独占禁止法第2条第9項第4号によって不公正な取引方法として、再販売価格の拘束が禁止されています。
これは、再販売価格の拘束が販売店側の自由な販売を阻害し、自由な競争社会による適正価格維持機能が働かず、ひいてはエンドユーザーたる国民の損失となるからです。
EUにおいては、EU機能条約第101条1項によって価格協定は禁止されています。
これは、水平的(同業者間)、垂直的(流通事業者間)にも適用されます。
米国での再販売価格の拘束は上記にも書きました通り、連邦上では即時に違法とはならない判決が出ておりますが、州法上では依然としまして、違法との判断が出ておりますので、違法適法の判断の予測が出来ないことから、実質的に再販売価格の拘束は難しいものと考えられます。
日本法の独占禁止法での禁止には例外があり、それは「流通取引慣行ガイドライン」という公正取引委員会のものがあります。
例えば、メーカーは販売店を経由して自社商品を販売しているが、流通経路や取引内容全体(販売店の在庫をメーカーが引き取る等)を見るとメーカーが直接販売しているといえるような場合には、「正当な理由」があるといえ、独占禁止法の禁止には当たらないとしています。
ですので、この「正当な理由」があるかを検討することになります。
また、EUでの実務的対応としては、EU機能条約第101条3項による一部例外を検討することとなります。
欧米との販売店契約等で、英文契約書上で準拠法を日本法にしておけばEUの競争法の問題は起きないとも考えられそうですが、準拠法の選択は契約上の紛争時に適用される実体法に及ぶことから、競争法等の行政的法律には作用しないと思われます。
ですので、準拠法を日本法にしていたとしても、他の国の競争法等が問題となり得ます。
その他にも契約書上で取り得る例外的な方法もございますので、一度お問い合わせ頂ければと思います。