英文契約書の英語deemについてイギリスの判例を交えてわかりやすく解説します

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英文契約書の英語「deem」

◆deemは、一般的には「みなす」という意味で使用され、事実が不明のときに、その事実を擬制する機能を持ちます。

本来、「みなす」は、事実を擬制したうえで、裁判上、一切の反証を認めないという効果があります。

ですが、下のイギリス判例でも詳しく説明しますが、この事実の擬制は絶対的なものではなく、反証が可能な点に注意してください。

判例上、deemは契約書の文脈からその内容が判断されますので、deemが擬制する事実と異なる事実も裁判所は認定する可能性があります。

イギリス判例

Alstom Power Ltd v Somi Impianti SRL(差し止め請求2011年11月21日)によりますと、「deem to be」は「一定の目的の範囲」という限定的な範囲で「みなす」と解釈されると述べています。

この判例解説(英語)はこちらからどうぞ。

この事案は、請負業者と下請け業者との契約書に、一定の状況や目的の場合に「自己の所有物とみなされる」と記載していました。

この判例でのポイントは、

①「deem to be」は「一定の状況や目的」でその解釈が影響を受ける

②この裁判に関わった判事が「‘deemed to be’と‘becoming’では意味内容が違う」

と述べていることにあるかと思います。

ですので、この判例から学べることは、

①’「deem to be」の解釈は文脈の影響を受ける

②’「deemed to be(所有物とみなす)」ではなく「becoming(所有物となる)」と記載しておけば、裁判上適切に解釈され、所有権がAlstom社に移転していたと考えられます。

ここから、deemは契約書の文脈の影響を受けることから、deemを安易に使用するのではなく、直接的に表現できる他の語句を使用するか、又は文脈上でしっかりと補足しておく必要があるといえます。

日本の民法での「みなす」

日本の民法では、「みなす」と「推定する」は厳格に区別されています。

「みなす」の代表的な例としては、相続人についての規定の中にある「胎児 は、相続については、既に生まれたものとみなす (民886条①)」があります。

「みなす」は、事実を擬制したうえで、裁判上、一切の反証を認めないという効果があります。

これに対して、「推定する」は、事実を推定し、裁判上の反証があれば、その事実を認めるもので、一種の社会通念に従ったものということが出来ます。

その例としては、株券の占有者についての規定における「株券の占有者は之を適法の所持者と推定す (商205条②)」があります。

deemなどを使用するときの注意点

英文契約書での"deem","consider","presume","regard","treat"などの扱いについては、明確な判断基準が存在せず、不明確である場合には、相手方に確認する、文脈をきっちり記載する必要があります。

◆英語の例文・書き方

①The notice by airmail shall be deemed to have been received by the other party seven (7) working days after the date of dispatch thereof.

②The guarantor shall be presumed to have warranted his solvency at the time when this Agreement is made.

◆日本語例文・読み方

①航空郵便による通知は,発送日から7労働日後に相手方が受領したものと みなす。

②保証人は、本契約締結時において、その資力を担保したものと推定する。

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