英文契約書の贈賄禁止条項(No bribery)をわかりやすく解説します

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贈賄禁止条項(No bribery)について

現状

英文契約書において、贈賄禁止条項がどのように関わるのかということは、国際ビジネスに余程精通している方でないとあまり知られていない内容のものかと思われます。

海外、特に発展途上にある法律遵守意識の低い国でのビジネスにおいては、賄賂や金銭の収受は特別なことではないという現状があります。

そういう国での取引を行っていると金銭の収受に対して、麻痺してしまい、国際的な潮流としての賄賂に対する厳罰化を忘れてしまうことが起こりえます。

特に、大規模な国際契約やプロジェクト、建設工事、代理店契約、コンサルタント契約、コンピューター・防衛機器納入契約、自治体への販売契約、国立病院への医療機器販売契約、各国水道局への販売契約などでは、公務員に対する賄賂が頻繁に行われる状況があります。

現在では、世界の多くの国々が、OECDの外国公務員贈賄防止条約の趣旨に適合する賄賂禁止の法律を制定しています。

日本においての贈賄禁止について

日本においても、不正競争防止法第18条(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)において賄賂禁止の規定を定め、1999年2月に施行しています。

この法律によって、外国で行った贈賄行為が国内法によって罰せられる可能性があります。

当然ですが、日本国内での贈賄行為は以前から禁止されています。

贈賄禁止の注意点

この贈賄禁止の流れは、国際的なものであり、より厳罰化されていることから、国際取引では賄賂をしないということを心に固く持つことは当然として、英文契約書において賄賂禁止条項を記載し、当事者双方の確認事項としておくことが必要となります。

仮に、贈賄行為を契約の他方当事者が行った場合、特に代理店、販売店、流通パートナー等によって行われると、その信用失墜は契約相手の自社にも及ぶことになります。

ですので、契約の他方当事者が賄賂禁止条項に違反し、賄賂行為をした場合には、その契約を即時に解除できるように、解除権を明確にして規定しておく事が必要と言えます。

このような大型の国際的取引で行われる贈賄は、誰が見ても分かるような方法ではなく、送金先がタックスヘイブン、欧州(スイスなど)をはじめ、賄賂行為を認識し難い方法でおこなわれることも少なくないので、その賄賂行為を認識する事が難しいのですが、自社にも影響がありえますので、契約の他方当事者の行動にも注意を払う必要があります。

贈賄禁止を徹底するために取り得る対策

贈賄事件の認識の難しさは、実際には贈賄エ作を指示しているわけでも了解しているわけでもない場合においても、現地の業界では一定の行動と価格、フィ一などにより、第三者から見て贈賄を指示・了承しているという外形ができ上がってしまう事があるということです。

仮に本人が本当に知らなくても、そのエージェントやコンサルタントが贈賄工作をおこなったことを知らないことが過失だと判断されてしまう事があり得ます。

そのためには、支払う報酬や代金の妥当性まで精査することが必要となります。

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  • ◆英語の例文・書き方

    (1) Neither ofthe parties nor its employees, agents, consultants or subcontractors, or their employees, agents or consultants shall make any payment or give anything of value to any government official,(including any officer or employees of any govern ment department, or agency)to influence his orits decision, orto gain any other advantage forthe parties in connection with the performance of diis Agreement.

    (2)The parties shall hold each ofthem harmless for alllosses and expenses arising out of such violation.

    (3) In the event of any such violation ofthis Article,the party whose conduct does not violate this Article may, atits sole option,terminate this Agreement.

    ◆日本語例文・読み方

    (1)いずれの当事者もその従業員、・代理人・コンサルタント、 もしくは下請人も、またはかかる者の従業員、代理人もしくはコンサルタントも、政府の役人(政府部門の役職者もしくは職員、または機関を含む)に対して、本契約の履行に関連して当該役人または機関の決定に影響を与えるために、または当事者のために他の利益を得るために、支払いをなしまたは高価な物を贈与しないものとる。

    (2)当事者は、かかる違反により相手方に生ずるすべての損失及び費用を相手方に補償するものとする。

    (3)本条の違反が発生した場合、その者の行為が本条に違反していない当事者は、単独の裁量により、本契約を解際することができる。

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