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国立大学O大学 研究センター教授 様より
この度はリーガチェックありがとうございます。 大変参考になるコメントでした。 ありがとうございます。
権利非放棄 (No Waiver)
◆Waiverとは、権利放棄という意味の語句です。
このWaiverの条項の意味はなかなかイメージが沸きにくいかと思いますので、まずは、かみ砕いた具体例をお読み頂き、その後解説したいと思います。
具体例
例えば、大家さんとワンルームマンションの賃貸借契約を結び、借主さんが家賃を支払っていました。
ですが、借主さんの給料日前が家賃の支払い日なので家賃の支払いが契約書記載の時期より遅れることが多く、大家さんもいつも「仕方ないな~」と言ってそれを許してくれていた場合を想定してみましょう。
その場合には、借主さんとしましては、「いつも許してくれるのだし、大家さんは私の事情も知っているので、今月も大丈夫だろう」と考え、今月も来月も家賃の支払いが遅れます。
ところが、大家さんが突然請求すると、借主さん側からはいつも大家さんは支払いの遅れを許してくれていたのでこれは大家さんも了解済みだとして「大家さんは契約書記載時期に請求する権利を黙示的に放棄した」と主張する可能性があります。
とすると、裁判所においても種々の事情を勘案して黙示の放棄を認定する場合も考えられ、大家さんとしては契約書記載時期での請求ができなくなる恐れもあります。
他方、大家さんはいつも大目に見ているだけで、実は大家さん自身も借り入れがありぎりぎりの生活でしたので、家賃の支払いを契約書の記載時期にしっかり行っていただきたく思っている場合もあります。
そのような場合に、いつもは大目に見ていた家賃支払いの遅れを「今月から契約書記載時期に支払っていただきたい」と通告できるように契約書に定めておくことがこの「権利非放棄(No Waiver)」という条項の意味です。
不可抗力の詳しすぎる説明については、英文契約書の不可抗力 force majeureでぜひご確認ください。
Waiverの解説
上記の具体例でもお話させて頂きましたが、一方当事者が、一定の状況で、契約書に記載された権利を行使しない場合には、相手方としては、その権利を行使しないものと考えて、その後の取引を継続していきます。
そのような場合に、突然、権利者においてその権利を行使すると、相手方は権利者がもうその権利を行使しないものと考えて取引を継続していたにも関わらず、取引の安定性を害する結果となってしまいます。
そのような結果にならないように、本条項によって、一定の事実が生じたときに、権利を行使しなくても、権利者において権利を放棄したわけではないことを明確にしておく必要があります。
これを英文契約書で定めたものがWaiverとなります。
禁反言の原則(Estoppel)と権利放棄との関係
また、英米法や日本法には「禁反言の原則(Estoppel)」というものがあり、当事者の一方の行為に対して、相手方が信頼を持った場合には、その行為に反する行為を禁止するというものです。
この原則の適用を排除するという面もあります。
◆英語の例文・書き方
Neither this Agreement nor any provision hereof may be waived without the prior written consent of the Party against whom such waiver is asserted.
No delay or omission by either Party to exercise any right or power shall impair any such right or power to be construed to be a waiver thereof.
Consent by either Party to, or waiver of, a breach by the other Party shall not constitute consent to, waiver of, or excuse for any other different or subsequent breach.
◆日本語例文・読み方
本契約 ま た は本契約の規定について権利放棄する 場合、 当該権利放棄 の主張を受け る 側の当事者の書面に よ る事前同意を要す る 。
当事者のいずれか一方が権利 も し く は権力の行使を遅滞 し、 ま た は こ れを行使 し なかっ た場合であ っ て も 、 当該権利 も し く は権力 を損な う も のでな く放棄 した と解釈されな い も の と する 。
一方当事者に よ る 違反に対す る 他当事者の承諾 ま た は権利放棄は、 他の異な る 違反 ま た はその後の違反に 対す る 承諾、 権利放棄 ま た は免責 と な ら な い も の と す る 。
文責 行政書士事務所 Golden Willer 国際経営・法務事務所
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