◆「契約譲渡(制限)」の条項は,契約上の地位や、債権債務、契約それ自体を第三者への譲渡を禁止するものです。
英文契約書では、相手方の信頼が少ない状態から契約交渉を経て、少しづつ信頼関係を形成していきます。
とすると、突然、自分の了解が無いところで、契約上の地位の譲渡等があれば、全く信頼の無いものとの取引を強要されることになり、その者の負担は計り知れません。
反社会的勢力とのかかわりがある企業に譲渡される恐れもあり、そうなると債権の取り立て等に対して契約条項の遵守は期待できなくなるかもしれません。
他方で、プラント建設契約や、業務請負契約、販売店契約、合弁事業会社の株主間契約などの契約では、相手方が契約上の地位や契約それ自体を第三者に譲渡したり、契約内容を変更したりすることもありますので、契約譲渡の条項はその取引を具体的に考察し規定する必要があります。
契約譲渡の規定を考える場合には、たとえば、
①両当事者において、相手方の事前の同意なしには契約譲渡することを認めないとする(no assignment)
②契約の相手方において一定の株式を保有する子会社(subsidiary)等の一定の 範囲の関連会社(affiliates)への契約譲渡を認めるものとする(関連会社への譲渡を認める方式)
③契約上の地位を譲渡したりした後も、契約上の地位の譲渡人が契約の履行の責任を負担し続けるなどの条件を付すことによって譲渡を認める(重畳的債務引き受け方式)
等があります。
また、相手方が交代することは、その信用状態にも変更を期すことですから、支払や債務の履行等の信用も低下することになります。
そのような場合は,本文例のように,相手 方の事前の同意なくしては契約譲渡できない旨の条項を挿入しておく必要 があります。
Neither this Agreement nor any license or rights hereunder,in whole or in part, shall be assignable or otherwise transferable by any Party without the written consent of the other Party.
Any attempt to do so in contravention of this Article shall be void.
いずれの当事者も他方当尊者の書面による同意なくして,本契約また は本契約に基づくライセンスもしくは権利の全部または一郎を譲渡し, またはそれ以外の方法で移転することはできない。本条に違反してその 譲渡または移転を試みた場合,これは,無効とする。
下記の記載例は、下請けの場面で権利穣渡がなされた場合に、譲渡者が引き続き責任を負う 旨を表現する規定です。
Neither party shall assign this Agreement orits rights under this Agreement or delegate its obligations under this Agreement without the other party's prior written consent.
In the event of such assignment or delegation, the assigning or delegating party shall remain liable to the other party and shall not be relieved of any obligation underthis Agreement.
いずれの当事者も 相手方の書面による事前の同意なくして,本契約 自体または契約上の権利を譲渡し 、 または本契約上の義務を下請けに出 すことはできないものとする。
かかる譲渡または下請けをした場合,当 該当事者は、 相手方に対し引き続き履行責任を負い 本契約上の義務か らは解放されないものとする。